社会貢献
福島第一原子力発電所直後の定点観測
アルファ放射体実験室では福島第一原子力発電所事故の直後の13日13:00から、事業所内での空間線量率の定点測定を開始した(下図)。図には、東北大学病院モニタリングポストの空間線量率データも示す。金研アルファ放射体実験室の定点観測データはモニタリングポストのデータとよい一致を示し、当初の事態把握に非常に有用であったことを示す。また、12日から14日には非常に強い空間線量率が観測されたが、降雨等がなかったため、プルーム(放射性雲)の上空通過があったこと、15日以降の降雨と17日以降の降雪で仙台市街への放射性物質の沈着が始まったことが読み取れる。
アルファ放射体実験室における空間線量率の測定結果(赤点)と、東北大学病院モニタリングポストのデータ(灰色実線、東北大学病院 阿部養悦先生のご提供)、降雨・降雪量(仙台気象台)の比較。
地方自治体への行政支援:1000件を超える受託測定
福島第一原子力発電所からの放射性物質の漏洩は広範な地域に居住する国民の健康衛生上の問題となり、厚労省は食品(3月17日、4月4日、8日)、水道水(3月19日、21日)に地方自治体に対して矢継ぎ早に暫定基準と指示を出した。厚労相の指示(3月24日)により宮城県でも水、食物の放射能濃度の測定が必要となり、翌25日から東北大学本部を通じて、東北大では金研アルファ放射体実験室とサイクロトロン・RIセンターが測定を担ってきた。アルファ放射体実験室で、このような濃度測定が可能であったのは、日々の管理業務において、液体試料測定を行っており検出器検出効率校正のための標準線源を所有していたためである。震災後に本所で受入れた環境試料数を下図に示す。2013年度は合計で226件の測定数である。2012年1月から特に宮城県と仙台市からの委託件数が減っているのは、県と仙台市は自前の測定体制を確立できるようになったためである。このように、震災後に行政が体制確立できるまでの過渡期において、大学は放射線測定という基盤技術を提供し、行政支援の役割を果たしたということができる。
山村朝雄, 白﨑謙次, 佐藤伊佐務、放射線モニタリング活動を通じた東北大における支援活動、放射線 38 (2013) 159-164.